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同僚の死、と娘。

急な残業になってしまった時など、娘をたまに会社に来させていたので、娘も亡くなった同僚と面識があった。

お菓子をもらったり、学校の話をしたりもしていた。他がオッサンばかりで、人見知りの娘が普通に話せる相手は同僚ぐらいだった。同僚にはこどもがなかったが、こども好きで、可愛がってもらっていた。




2月半ばから3月のはじめ、忙しくしていた。
娘はずっと学童クラブの延長預かりで、夫や父にお迎えに行ってもらい、私とは夕食も一緒にできない日々が続いていた。でも来週からはもう少し余裕ができそうだと思っていた矢先に、同僚が倒れて、また残業の日々。

倒れた数日後のある朝、娘との登校途中、考えるでもなく同僚のことを考えていたら、私の眉間にしわが寄っていたらしくて、娘が「お母さん、怒っているの」と聞いた。

だから娘には状況を話した。お母さんの会社の女の人、知っているでしょう。あのお姉さんね、入院してしまったの。だからとても心配なの。それでこういう顔になっちゃうんだ。

娘はとてもびっくりして、どういう病気で、どのぐらい悪いのかを聞いてきた。

病気についてはごく簡単に答えて、状態はあまりよくない、ということも言った。あのね、今は自分の力で息ができないのよ。

娘は黙ってしばらく考えて、それは、私にとって、Sちゃんが息できないっていうのと同じなんだよね。だからお母さんすごく心配なんだね、と言った。私はそうだと答えた。

だからね、これからも時々こういう顔になっちゃうかもしれないけど、それは怒ってるんじゃないから。それとね、お姉さんの分のお仕事も手伝わないといけないから、まだこれからも遅くなる日が多くなると思う。ごはん一緒に食べられないけど、ごめんね。

そう言うと、娘はわかったと言い、それから意を決したように

「ねえ、死んじゃうかもしれないぐらい具合悪いの?」

と聞いてきた。今まで誰かの病気だ入院だという話になっても、そんなことを聞いてきたことはなかったから、「今回は何か違う」という空気を感じ取ったのかもしれない。

私は答えに悩んだ。でも正直にそうだと答えた。娘は更に

「死んじゃうかもしれないっていうのは、何パーセントぐらい?」

と聞いてきた。

それは正直に答えられなかった。その時には既に、誰も口には出さなかったけれど、状況的には 時間の問題 になっていたから。「半々…くらいかなぁ」と濁して答えた。

娘は「半々ってことは50パーセントってことだよね」と言いなおし、そしてまた黙り、次に口を開いた時には、違う話題を始めた。

それっきり娘とは同僚の話はしなかった。娘のいない時に、夫とは少し話して、2人で暗く落ち込んだりもした。また、まったく関係ない他愛のない話題をしていて、話の流れで、「生きるの死ぬのの話じゃないからさぁ」と口をついた瞬間に涙が急にあふれて止まらなくなることもあった。その話をしてもしなくても、ずっと同僚の安否についての悲しい予感が、職場でも家庭でもつきまとっていた。



私が訃報をご主人から聞いたのは、昨日の朝のことだ。
でも夫と娘に伝えたのは、夜、帰るコールの時だった。その時になるまで、言い出せなかった。

家に着くと、先に夫と帰宅していた娘がドアを開けてくれた。
目が真っ赤だった。
「知っちゃった?」と私が夫に言うと、夫はうなずいた。
それから10分くらい、娘と2人で泣き続けた。

それから、娘は私に、どんなに自分があのお姉さんが好きだったかを語ってくれた。正しくは、それを自分で言うことができず、「お父さんから言って。私、言えない」と言って、私が帰宅する前に夫に話していたことを、夫が話した。いつも優しくしてくれて、お菓子をくれたり、そのお菓子も、自分が甘いものよりしょっぱいものが好きだと覚えていてくれて、ちゃんとしょっぱいおせんべいを選り分けてくれたこととか。友達にいじめられていやな思いをしたときに話を聞いてくれたこととか(実はこの話の記憶が私にはないのだが…)。

私も娘に話した。お姉さんに優しくしてもらってよかったね。だからこんな風になると悲しいね。お姉さんね、覚えてないぐらい小さい時にお父さんも早く亡くしていて、だから、今ようやく天国でお父さんと会えて、淋しくないと思うよ。

語りながら、同僚のお母さんは若くして夫を亡くし、幼い娘3人抱えて女手一つで必死に育て上げ、3人とも結婚してようやく一安心という時になって、一番年若い末娘を失ったのだと思い至り、また暗澹たる気持ちになったりもしたが、そこは娘には語らず。


私のひざにつっぷして泣き、そのまま私の話を聞いていた娘が突然起き上がった。かと思うと「悲しいけど、でもずっと泣いてても、お姉さんは嬉しくないと思うから。だから、もう気分変えよう!!」と宣言して、学童のイベントでもらってきたお菓子詰め合わせを全部だし「はい、食べよう食べよう!」と私と夫にも配った。
それが娘なりの気持ちの落ち着かせ方だったのだろう。

その後、夫と2人になった時をとらえて、私が帰ってくるまでの間のことを聞いた。
私からの電話の後、夫がズドーンと落ち込んでいると、娘がその気配の異様さに気づき、声をかけてきたそうだ。それで、同僚の死を告げると、その場でワアアーと泣き出したと。少し落ち着くと、上述した「お姉さんとの思い出」を話した、と。大体私の想像通りの展開だったんだな、と思っていると、最後に夫が付け加えた。

「あとね、お母さんがどんな気持ちだろうってすごく気にしていたんだよ。
お父さん、会社に仲の良い友達いる?って聞かれたから、いるよって言ったら、その人が死んじゃったらどう思う?お母さんはね、いまそういう気持ちなんだよ…って。それで、お母さんが帰ってきたとき、悲しそうに迎えたほうがいいのか、明るくしてあげたほうがいいのか、って考えてた」

そうか、そんなことまで考えていてくれたのか。私のほうは、面識があるとはいえ、親しいとは言いがたい関係の「母親の同僚の死」というものに、娘がそこまで具体的に思いを馳せることは想定外だった。もっとずっと、架空の物語のように、とらえるかと思っていた。
私はもっと、娘に寄り添うべきだったかもしれない。いや、私がいちいち語らなかったからこそ、娘は娘なりに必死に家庭内に漂う不安感の正体をファンタジーで処理することなく、もっと具体的なものとして感じ取ろうとしたのかもしれない。

悲しいというのは、こういうことだ。死ぬというのはこういうことだ。生きているということはこういうことだ。

娘は娘なりに、そして私も私なりに、そんなことを考えている。

そして、こどもがいてよかったなと思う。この悲しみを、理屈でなく一緒に感じてくれる心がそばにあることが、どんなに心強かったか。その意味では、夫は娘よりも面識のない同僚の死を、必要以上といえるほどに、一緒に悲しんでくれている。私が前後の脈絡なく会話の途中で泣き出しても、何も言わずにそのまま受け止めてくれた。彼は、彼の持つ不器用さゆえに、「同情するふり」ができない。彼が悲しそうに見えるときには、心底悲しんでいる。そして、彼はいま心底悲しそうなのだ。そのことが、どんなに私を慰めていることか。

同僚にはこどもがいなかったから、ご主人は今、ひとりで悲しみを抱えているのだろうか。自分の兄弟や妻の姉たちはいるから、一緒に悲しんでくれているとは思うけれど、それは一義的には死んでいった妻を悲しんでいるのであって、妻を失った自分を支えてくれているのとは違うのではないだろうか。私の娘は、夫は、おそらく友を失った私のために悲しんでくれているのだ。私が嘆くのが辛いから、悲しいのだ。

同僚の死を悲しむ人は、たくさんいる。
だからこそ、今は、ご主人や同僚のご家族のために悲しむ人がいてほしい。いると思うけれど。それを同情と呼ぶならば、同情とはなんと美しい感情だろう。上から目線の憐憫なんか願い下げだが、大切の人の悲しみに寄り添う気持ちは尊いだろう。
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今会社ですが、読んでて泣いてしまいました。
自分の友だちに置き換えて考えたり、おかあさんの気持ちを考えたりする娘さん、なんて感受性豊かなのでしょう。
よそ様のお嬢様のことながら、感動しました。

一人になってしまった同僚さんの御主人の悲しみも、察するに余りあります。
突然死や事故死って、何も言い残すことなく逝ってしまうから…残された人は考えても詮無いことをずっと考えてしまいそう。

えー、とりとめもなく書いてしまいました、すみません。
命について、いろいろ考えさせられた数日間でした。

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maki-mariさん
maki-mariさんの日記も拝見しました。
お子さん方を残して逝かれたママさんも心残りだったでしょうね。ご冥福をお祈りします。
そういえば、如月小春さんも亡くなったのは44歳でした。
今、改めて調べたら彼女もくも膜下出血が死因だったのですね。

80、90でもお元気な人もたくさんいる現代、
若くしての死に対しては、天寿を全うした方とは
違った感慨を覚えずにいられません。

Re: タイトルなし

鍵コメさん
温かい言葉、ありがとうございます。
夫は、社会人・父親・夫としては不足した部分が多いのですが(涙)
なぜだか心弱っている人を癒すオーラがあるようで、
そういう時には実にいい仕事をします。
あ、もしやヒーラーとかになればいいんだろうか、彼は…。

相変わらず微妙に残業続きで疲れっぱなしですが
今日から派遣さんが来てくれるので、
少しは楽になるのではないかと思います。
ありがとうございます。

死は身近にあるものなのですね

ここ最近更新がないので、何となく気になっていました。ただ、詮索する筋合いのものではないので、…。
生きることへの執着とか未練なんて考える時間も与えられず、死に至ったことを考えると、改めて死は身近にあり、生きていることの重みや感謝を考えさせられました。

水銀軟膏さん
そうですね、まさにこのブログ(前身のHPからですが)のタイトルの意味は「死を想え(自分が必ず死ぬことを忘れるな)」と訳されるラテン語の言葉から取りました。
つけた当初はなんとなくカコイー!!というノリでつけただけですが、最近はこの言葉の重みを感じます。
Secre

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Cakeと書いてけーくと読む

Author:Cakeと書いてけーくと読む
会社員。家族は夫(鬱回復期か微妙なメンヘラー)と娘(中学生になりました)。

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