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あさのあつこ「バッテリー」感想

さて、「バッテリー」の感想だ。

冒頭で早くも感じたのは、文章から立ち上るBL臭(BL=Boys Love 男性の同性愛をモチーフにした小説、漫画といった創作物。狭義には女性作家による"美しい"少年愛ものであって、二丁目的なゲイの世界観とは違う)。




元腐女子としては、「そういや小説JUNEってこういう文章がよく載っていた」と思わずにはいられなかった。いや、しかし、映画化もされ漫画にもなったベストセラー。むしろ「小中学生に読ませたい本」として推薦までされている。そんな本が、まさかBLなんてわけが。これは私の腐女子レーダーの過剰反応に違いない。そう言い聞かせて、なるべくニュートラルに、純粋なコドモの瞳で読み進めたが、やっぱりどうにもBLだ。

出てくる少年たちについて述べる時、視覚的な描写しかない。主人公のピッチャーは美形で、キャッチャーは体格がいい。でも絶対ドカベンでもなければ伴宙太でもない。「バッテリー」の少年たちは、「野球」大好き小中学生ダンスィのくせに、体臭がまったく感じられない。少年という言葉で表されるものから、きれいな上澄みだけを掬い取ったような。


だからこそいい、面白い、と感じる女の子がいるのはわかる。BLというのはそもそも処女のための文学なので、「無臭男子」のほうがいいに決まっている。頭皮が犬の耳垢みたいな匂いがするニキビ面のリアル少年なんか要らない。無臭の美少年たちが、自分(女子)には決して手の届かない聖域でくんずほぐれつする様を眺めていたい。手が届かないというのは、自分が汚されないという意味でもある。性に興味を持ちつつも、異性から直接その対象として値踏みされたり、あるいは蹂躙されたくない少女たちが、安心して官能に浸れる小説がBLなのだから。

でも、リアルダンスィはこれを読んだ場合、素直に野球小説だと思って読むのかなぁ。そして感動するのかなぁ。BL臭はスルーするにしても、「こんなヤツいねーよ」「うそくせー」と思わないのか。「野球っていいなぁ!」とか「やっぱ友情だよな!」と思うのか?


で、作者は結構そのへん計算して書いていると思う。

わかる人にはわかるBLくささ。単なる感動話にしないための主人公の性格の悪さ。無臭の非現実性を補完するかのように配置されている、主人公を取り巻く周辺人物の凡庸さ。

地方都市の中学校の野球部を舞台にしたことも計算だと思う。会話は方言で、流行語は出てこない。高校ではないから甲子園にも行かない。それらを出さないことで、"時代背景"に結びつく要素を排除しているのだと思う。時代性を背負わないことで、あらゆる年齢層の共感を誘うような仕掛け。

腐女子もそうでない女子も、スポーツ少年もそうでない少年も、元少年少女だった大人も、学校の先生も保護者も、天才も凡人も、みんながそれぞれ安心して楽しめるようになっている。この全方位に向けた隙のなさを文章の巧みさだと言うなら、そうなんだろう。思春期。友情。挫折。栄光。家族。学校。挑戦。確かに読書感想文も書きやすそうだ。


そういったわけで、「よくできている作品」だとは思う。思うが、なんかこう、読む前に目にしていた各所の評価に見合うほど「素晴らしい作品」なのかというと、疑問はある。

私は割と作者が「こう読め」と押し付けてくるような作品が好きで、今時の作家で言えば京極夏彦みたいな。だから、今回の「バッテリー」のような、「みなさんそれぞれヒットするポイントが違うと思いますが、それでいいんですよ☆」という"親切な"作品は、ちょっと物足りない。それでいて、実はそう単純に親切なわけでもなく、最後まで読むと「原田巧(主人公)の成長物語だと思いきや、違ったでしょ? うふっ」と舌を出す作者の底意地の悪さもうっすらと感じられて、そのへんがまた、BL作家っぽいと思ってしまったりするのだ。

今、同じ作家による「THE MANZAI」を読んでいるところ。感想が全く同じになりそうでイヤな予感はするのだが、こちらは「バッテリー」に比較すると女子が活躍していて、特に1人の女の子はあからさまに腐女子キャラなのだが、あからさまだからこそ、バッテリーよりむしろBL臭は控えめだ。ただ漫才が題材なだけに会話でのお遊びが多くて、ラノベ化している(もちろん悪い意味で)。

要はあさのあつこの文章とは相性悪いんだろうなぁって思うのだけれど、文体のBL臭だの作者の底意地の悪さだのまで感じ取れないであろう娘にはそれなりに面白く読めると思うし、ろくでもないラノベを読むよりはるかに優れた文章ではあるので、そのうち読ませてみようと思う。
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No title

Cakeさんの感想、ツボったー。
もうすっかり読んだ気になれました。
あさのあつこ、やっぱりか、曲者か。
私も相性悪そうだなぁ。

だいたいみーんなが褒める作品って何かヘン。
賛否両論ないとおかしいと思います、いろんな人がいるんだから。
いやぁ読んでもいないくせに溜飲が下がりました。

>まきまきさん

この記事を書いた後で「あさのあつこ」がらみでいろいろ検索してみたら、BL呼ばわりは既に定説のようでした。やっぱりねって感じですが。

私は三浦しをんの「舟を編む」に期待していたんですが、まきまきさんの書評見て買うのはやめまして(笑)

そのうち図書館で借りて読もうかなーと思っています。「バッテリー」もその程度の軽さで読むならいんじゃね?と思いますよ、うん。
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会社員。家族は夫(鬱回復期か微妙なメンヘラー)と娘(中学生になりました)。

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