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エントロピー

某掲示板でこんな言葉を知った。
悲観主義は気分に属し、楽観主義は意志に属する
アラン『幸福論』

なるほど~とわかった気になるけれど、この言葉に至るまでの流れも知りたい。そうでないと本当に理解できているのか判断つきかねる。「わかった気になる」のと、「わかった」の差は大きい。齢40も越えるとそんなことも「わかって」くる…「気がする」。

この「幸福論」なる本、確か実家にある。実兄が持っていた。文庫本で、カミュの「シーシュポスの神話」の隣にあったと思う。並びまで覚えてしまうほどに長年その背表紙は見ていたが、どちらも読んだことはない。長兄が読んだのかも定かではない(格好はつけるが中身が伴わないタイプ)。次兄は絶対に読んでいない(脳みそ筋肉タイプ)。

兄の蔵書の中では、同じアランでも、ファーストネームがアランのアラン・シリトー「長距離走者の孤独」は読んだ。これを読んだ後に吉田秋生の漫画「カリフォルニア物語」も読むと、なんだかこう、感極まる感じがある。

私の実家は、父と長兄と私が本好きで、母と次兄は活字を見ると眠くなる部類の人間だった。


私が高校生時代に気づいたことのひとつに、賢い子の家には必ず「親の本」がズラリと並んでいる、ということがある。
我が実家は本の量はそれなりにあった。が、収納スペースと経済的な理由で、書斎といったものはなく、食器棚を再利用した書棚にあるのはほぼ文庫本で、また小説が主だった。やっぱりそこは、ハードカバーで、研究書や専門書が並んでいるほうが、より「らしい」ところだ。

高校時代に仲の良かった子に、バカみたいに頭の良いのがいて(彼女は今医者をやっている)、その子の家は狭い団地だというのに、壁一面にぎっちりと本が並び、書棚に収まらない分は床に積まれていた。誰の本かを聞くと、ほぼ父親のものだという。お父上は作家か研究家か何かなのかと聞くと「区役所職員。今年も昇級試験にまた落ちてお母さんが怒ってる」と。
では、そのお母上は何をしているのかを問うと中学の国語教師で、しかし家には彼女の本はほとんどない、と言う。

積まれた本はあらゆる分野にわたっていて、中でも平積みされた一群の一番上にあった「エントロピーとエコロジー」という本が目に付いた。
エコロジーはなんとなくわかる。でもエントロピーって何だろう、と思った。専門用語っぽくてかっこいい。アイデンティティとかシュールレアリスムとかいった単語をさりげなく使えたらカッコイイと思っていた当時の私は、脳内の「かっこいい言葉メモ」に「エントロピー」を記入した。

区役所職員のお父様は「接待」という名の下に深夜にしか帰ってこない営業マンの我が父と違い、定時に帰宅した。午後6時には父親が帰宅していて、家族と一緒に夕食をとる家庭もあるということを初めて知った。

そして、私の姿を見て驚いていた。娘が友達を自宅に連れてくることなど、ほとんどなかったらしい。第一声で「お友達ですか?うちの娘の友達というなら、あなたもさぞかし変わり者なんでしょうね」と言われた。大当たり。

それから「エントロピーとエコロジー」を指差して「○○さん。これはもう読みましたか」と言った。○○さんとは、その友達の名前。お父さんは娘をさん付けで呼んだ。もっとも、この時は私に対するジョークのつもりでもあったようで、普段は普通に呼び捨てで、ですます口調でもなかったようだ。ただ、第一声に面食らっていた私は、「この父ちゃんも相当変わり者だ」と思っていたので、娘に対する他人行儀な話しかけ方も「やっぱり変」という気持ちを深くするだけのものだった。

友達は「途中まで読んだ」と答えていた。
その言葉に、すげー。こんな難しそうな本を読んでいるんだ。やっぱこの子、頭いいな!!と、頭悪そうな感想を抱いた私。

今、書名と記憶にある表紙のイメージを元にamazonで検索したら、たぶんこの時の本はこれだったと思う。



1986年刊行。私はその時16歳だったはずだから、この本が新刊として出てすぐだったと想定すると、私の記憶と一致する。
amazonの紹介文によれば「原子力発電に代表される科学技術文明への根源的批判と、エコロジカルな循環回復のための提言」だそうだ。そういう本を、今から四半世紀前に話題にしていた女子高生とその父親がいたのだ。

今の私が読んでも理解できない気がしてならない。

なんたって、「エントロピー」の意味をいまだに知らないから。
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まとめtyaiました【エントロピー】

某掲示板でこんな言葉を知った。悲観主義は気分に属し、楽観主義は意志に属するアラン『幸福論』なるほど~とわかった気になるけれど、この言葉に至るまでの流れも知りたい。そうで...

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会社員。家族は夫(鬱回復期か微妙なメンヘラー)と娘(中学生になりました)。

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